大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜地方裁判所 昭和39年(ワ)67号 判決

理由

和光海運株式会社(旧商号日高海運株式会社)が昭和三八年四月一七日高見鉄工株式会社に対し、原告主張の約束手形を振出したこと、右手形を高見鉄工株式会社が同年五月七日原告に裏書したこと、原告が本件手形を満期に支払場所へ呈示したことはいずれも当事者間に争いがない。

成立に争いのない甲第一号証(約束手形)によれば、高見鉄工株式会社代表取締役高見栄蔵は、会社の住所を東京都千代田区丸の内二丁目二番地丸ビル七階七二八区と表示した事実及び右手形に拒絶証書作成の義務を免除する旨の記載をなした事実が認められる。ところで、被告は右会社は登記されたものだと主張するが、成立に争いのない乙第一号証(登記簿抄本)によつてはその事実が認められず、成立に争いのない甲第一号証によれば、右会社は昭和三八年一二年二三日当時登記されていないことが認められる。してみると、本件手形が振出された昭和三八年四月一七日及びこれに裏書がなされた同年五月七日当時には、高見鉄工株式会社なるものは法律上存在しない会社であると推認されるから、被告がその会社の代表締役として裏書と拒絶証書作成を免除しても、その代表資格がない以上それは被告が個人としてなしたものと認めるのが相当である。なお本件手形の裏書については、右認定にかかわりなく、形式的には連続していることが成立に争いのない甲第一号証によつて認められるし、さらに本件手形を甲第一号証として提出していることによつて、この手形を原告が所持している事実も認められる。

以上により、被告は原告に対し金五〇〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和三八年九月一日から支払いずみまで、商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例